リアカバー  その3 GSX-R1100用





1.プロローグ

4ラウンド構成でカーボン製品の製作を考えていたが、
途中を省いて今回カーボン張りをしてみる事にしました。
前回ガラスマットの張り込みが大変だった事より、今回は
通常のようにハケとローラーで樹脂と繊維をなじませて、
気泡を抜いていく作業ではなくて、上下2枚の型を利用して
サンドイッチにしてしまう作戦です。

この方法の利点は、
1.Rのきつい所も簡単
2.サンドイッチするので余分な樹脂が流れ落ちる
3.裏面も綺麗な面が出来る

しかし、弱点も
1.上下の型の間に1mm程度の隙間を作る必要がある
  (カーボンやガラスマットが入る隙間が必要な為
   上下で違う型が必要)
2.型と型を押し合わせた時エアーを噛んでしまう事がある
3.型と型を押し合わせる装置が必要である

と、こんな感じです。弱点である1番目が最大の難点でしょう。





ちょっと、ここらでカーボンについて少し

※最近ちまたで、カーボンが結構流行っていますが、カーボンには
大まかに分けて2種類があります。ウエットとドライです。
最近”ドライカーボン製”カウルなどと言った言葉を見たり聞いたりすると
思います。少し前までは、ただ単にカーボン製だけだったのに。
ドライって何!!

では、
ウェットカーボン
これは、製品の表面がカーボンの模様をしたFRP製品です。
カーボンの模様と書きましたが、本当のカーボンを使用しています。
しかし、強度的、製作方法などはFRPと同じ手法であり、表面に
クリアゲルコートを塗り、カーボン+カラスマット、クロスを樹脂で
張り込んでいくものです。ですから、カーボン柄で、さほど強度も
強くはありません。

ドライカーボン
これは、カーボン繊維にあらかじめ樹脂が染みこんでいる(プリプレグ)
を張り合わせて、ある一定の圧力と熱を加えて製品を作ります。
圧力を加える事で、余分な樹脂が出てきて、軽量で強度な物ができます。
(アルミや鉄よりも軽くて強度も優れているそうです)
圧力はサンドイッチ方式でもOKと思いますし、熱はオーブンでも
可能でしょう。後はプリプレグがあれば一般でも製作は可能だと思いますが
やはり、圧力、熱の加減もあり、一般では難しい方法です。

カーボン屋さんでは、ドライカーボンが普通の事で、ウエットなんて偽物
の様な感じらしいです。


ちなみに、ここで言うカーボンとは、
なんちゃってカーボン=ウエットカーボン=カーボン柄のFRPの事です。





で、話をもとに戻して、弱点を克服する方法を考えます。
2.型と型との間にエアーが噛むのはやってみないとわからない事なので
まずはチャレンジあるのみです。
3.型の押し合わせは洗濯ばさみの強力版が手持ちであるのでそれを使用
します。少し大きな目タイプも準備しておきます。

で、やはり一番の問題が2つの型です。一つは今まで使用してきた型で良いの
ですが、この型より1mm程度の隙間ができる小さめの型が必要です。
瓦せんべいを焼く時のように上下の型の間に隙間がないとせんべいがぺらぺら
になるでしょ。せんべいのような簡単な型なら、1mmのアクリル板等を使用
して隙間は簡単にできますが、今回の様な形では層は簡単にできません。

で、考えても良い案は浮かんでこないので、今ある型と同じ型を作ります。隙間
は0です。この2枚を重ね合わせて作ってみます。
この2つの型では何も間に入らない時にはピッタリ合うのは当たり前ですが、
間に1mm程度の物をはさむとどこかが、ずれたり浮いたりするとは思いますが、
まずはチャレンジしてみます。


赤い方が、今まで使用してきた型で、黒い方が赤色の型から抜き取った押さえる方
の型になります。






では、早速作っていきます。
作業中は集中していますので、画像はありません。 と言うか、樹脂でねちょねちょ
なのでカメラが持てないのです。

作業手順は
赤い型(これ基本の型ですから)に透明なゲルコートをぬります。表面になる所なので、
ハケも新品を使い、最初の抜け落ちる毛も(ハケの毛ネ!!)抜いておきます。
いつも、黒ゲルコートの時は2回塗りしているので、一度塗って、ある程度乾いてきて
二度目を塗ります。塗った後も毛が落ちていないか確認しておきます。
ここで、今までに無かった体験をしてしまいました。
それは、ゲルコートのちぢみです。塗装などでは良く耳にすると思うのですが、そのちぢみと
全く同じ現象が発生してしまいました。ネットで調べるとプロの作業でもちぢみは発生する
らしく原因も良くわからないそうです。今回はたまたまテールレンズの(カットする)部分
だったので良かったのですが。他の場所で発生するとまた1からやり直しになります。
(今回はこのまま1日乾かします)

カーボンを貼り付けます。
その前に、樹脂の硬化速度を遅くしました。これは、今回は一度に3枚の繊維を貼って
いってその上に押さえ込みの型で押さえる所まで一気に作業する必要がある為、少しでも
樹脂の硬化速度を遅くした方が良いのではと思って、通常の1/2の硬化剤を入れています。

では、乾いたゲルコートの上に樹脂を適当に塗ります。
その上にカーボン繊維を置きます。繊維の折りの向きなどをここで修正して指などで軽く
押さえて樹脂を染みこませます。
また、樹脂を適当に塗ってカーボン全体に行き渡るようにします。
以後は、ガラスマットを張り込み、ガラスクロスを張り込みます。ここまでは、樹脂が
ベタベタ、ドロドロになってもかまいません。なるべく3枚の繊維が一体化する事に気を
付けるだけです。

で、最後に押さえ用の型を上からかぶせ、bigな洗濯ばさみで押さえつけます。
この時樹脂が垂れてくるので、注意が必要です。






やはり、かぶせる型のせいか、周囲が多少浮いて来ています。 型の曲面になじませるクリップと、全体を押しつけるクリップと分けて使った方が良い ように思えます。 このまま1日以上放置し、型を外します。前回カタナ用のチェーンカバーを作った時の 離型処理方法を今回は念入りにやっておいたので結構簡単に型から外れてくれました。
 




曲面への密着度は完璧です。 しかーし、小さな気泡や浮きがたくさん出来ています。
樹脂を塗る時に押さえつけるから気泡が発生する事は無いだろうと思っていたのに
ちょっとショックです。
気泡はエッジの部分に多くあるので、やはり全体的に押さえ込む必要があるのでしょう。
しかし、プロ???は違います。
気泡や浮きを修正する技を知っています。試した事はありませんが....
テールレンズが入る所にシワシワがありますが、これがゲルコートのちぢみです。

 




気泡がたくさんありすぎるので、大きな場所のみ修正しました。
これでも、10カ所ほど。
写真ではわかりづらいですが、修正した箇所が周囲と少し色が変わっていたり、
中の繊維の並びがずれたりしています。修正方法もまた勉強しなければ...




 




最後にテールレンズ用の穴を開けて、周囲を製品のラインに合わせてカット(削りこみ)
していきます。
120番や240番のペーパーで周囲を削るので、ここですごい時間がかかってしまいます。
プロはどうしてるんでしょうね。




 




やっと出来上がりました。実際のリアカウルに装着してフィッティングの確認をします。
いるも出てくる、スペアカウル(おそらく93年式)です。




 




カーボンの裏面には大きな気泡の後が見えますが、裏面はどうでも良いんです。
フィッティングも綺麗に入り完璧ですね。
でも、まだテールレンズを入れていませんでした。これも、スペアを使って確認します。










ここで、またカーボンについて少し、



これなんだかわかります???
抜いたばかりの製品ですが、太陽光に向けて写真を撮ってみました。
カーボン全体が光を通してるでしょ!!カーボンの編み込みの隙間を光りが通り抜けるんです。
で、こんな事も

 

カーボンの裏にLEDライトを付けて点灯させて見ました。
赤色のLEDや黄色のLEDを使うと、STOPランプやウィンカーとしても使えそうです。
車検ではNGになるとは思いますが。

ようは、普通のカーボン繊維は1枚だけの使用では、これだけ光を良く通す=編み目が結構
粗いんです。よく、オークションで”カーボンの裏を黒で塗ってます”とか書いてある製品
がありますが、これはこの透けて見えるのを隠しているんですよ。
だから、カーボン柄のFRPなんでしょうね!!

あと、表面はクリアを塗るって良く聞きます。透明ゲルコートを使っているのでその上から
クリアを塗る意味が良くわかりません。ゲルコートの劣化(黒ずんでくるとか)防止なのか?
自分のは当然クリアは塗りませんでしたが、裏面の黒はしっかりと塗っておきました。




では、車体に取り付けます。
まずは、その1の時に作った製品です。約2年半も使用してますが、不具合も一切無く
なかなか良い作品でした。(誰も言ってくれないで自画自賛してみました)






取り付け自体は簡単なので説明はありません。
近くで見ないとカーボンってわからないけど、気泡があるのがバレバレ!!
遠くから見ると全くノーマルぽい!!


作ったぞー って自己満足に終わりました。



 






今回の不具合対策も見えてきたので、
その4の可能性もあるかも



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